時にはこんな人も…

みなさんこんにちは、
コロナ禍の中でも相変わらずハンググライダーを作っております野間です。
我々のスポーツでも世界各地で自粛や規制が展開していて、最近になってようやく緩和されてきた次第です。
こんな時期でも僅かずつ注文が入って完全に途切れるわけではなく、意外な思いで居ります。


そんな中でやや古いモデルの注文が一件ありました。

それ自体は驚くべき事ではないですが、
この機体と比べると性能がほぼ同じながらもはるかに乗り易く、値段もやや安価な後継機が発売されて久しく、私達もその製品を薦めるので、事実上は生産中止になっているようなモデルです。

更によくよく事情を聞いてみると、こちらのお客さんは新しい方の機種は既に所有されていて、今回はいわば「コロナ不況で大変なビジネスを支援する寄付」のような位置付け、というような購入動機のようなのです。

弊社へのサポートというよりは、弊社の日本における輸入代理店を「長年のお付き合いだから」支援したいというようなことらしいのですが、それにしても私は首を傾げてしまいました。
たとえアップル信者だったとしても、必要も無いのに似たようなiPhoneを2個も買う意味があるでしょうか?



グライダーを購入するということは、まさしく経験を購入するということです。
持っていて経済的な価値が上がるわけでもなければ(むしろ確実に下がる)、(仲間内を除けば)ステータスになるわけでもありません。

購入されるご本人がより使い勝手の良いものを既に所有している時点で、今回の購入で未知の経験が得られる可能性はほとんどありませんし、それを「まあ、そんなものだから」で片づけてしまうほど安い買い物ではないはずです。

そしてモノを作る立場の者としては「作ったからにはボロボロになるまで使い倒して欲しい」と思うので、そういう未来が見えにくい点でこの仕事は(贅沢なようですが)そこまで気乗りはしません。

反面で、代理店にも弊社にも売り上げとなり、お客さんも納得ずくの確定した注文を敢えて覆そうというのもまたおかしな話です。



人の購買行動というのはとかく不合理なものですし、マーケティングやら何やら言ったところで常に教科書通りに行かないのは分かっていますが…。

普段から性能だの使い勝手だのを追及し、逐一理由を挙げて取捨選択し、可能な限り「科学的な」アプローチで製品の向上を目指しているわけですが、こうした虚を突かれたような購買行動を目の当たりにすると、ビジネスとしての成否は時として全く別の論理として存在しているということを思い知らされます。

ゆうきさんは「景気の悪い時に生き残れない会社はなくなるべき」と仰っていますが、不況下とはいえ人との”お付き合い”で僅かながらも意外な売り上げを稼ぐというのは、会社の持つ底力の一形態なのかも知れません。

時にはこんな人も…” への2件のフィードバック

  1. なかなか興味深い問いかけですね。
    これは私も店舗の現場では何度か経験したことがあります。

    >弊社へのサポートというよりは、弊社の日本における輸入代理店を「長年のお付き合いだから」支援したい

    これが本当の本心なんでしょうね。
    私の体験談ですが、東日本大震災のときはやはり1週間以内にお店にお客さまが戻ったところと全く戻らない店が北関東でもありました。長年の付き合いというのは逆に言うと、無くなったら困るという意味にもなります。そういう意味では、”自分の”お店や会社がなくならないように購入するというのは比較的普通かもしれません。

    ハンググライダーのように高級な趣味の世界では、居酒屋で「長年の付き合いだから、今日はもう一品多く注文するね」と1000円多く払う人と同じ感覚で、“時には100万円を払う人”がいても不思議ではないかもしれませんね。

    1. 商売というのは、人同士の有機的な繋がりと切っても切れない関係なんでしょうね。
      「ビジネス」というと、より利得のある選択肢を常に探しているようなドライな印象ですが、
      ものの本によれば、人というのは合理的な判断をすんなり下せる方がむしろ確率が低いようです。

      ただこうした「お付き合い」とか「無くなったら困る」という感覚が
      我々のようなニッチな産業では一種のカルテルを形成する原因にもなっていまして、痛し痒しです。

コメントを残す