値段表

先月の勉強会でウェブサイトのページ配置についての話が出ましたが、私の職場でも似て非なる事例がありまして、それについて考えたことを綴ります。
結果としてそれが出来ているかいないかはおくとして、会社として何かのコンテンツを掲示する時には大多数を占めてそうな受け手をイメージするのを忘れるべきでない、とあらためて思った次第です。

***
ある日のこと、商品の値段設定を見直すに当たって、ウェブサイトに掲載する各モデルのオプション内容を再度チェックして欲しい旨をボスに相談されました。

どういうことかと言うと、まず現在販売しているハンググライダーには数種類のモデルがあり、用途は初心者用の簡易な構造のものから競技用の高性能のものまであり、値段と滑空性能が段階的に上がっていくものなのですが。
それぞれのモデルに、セール素材やフレーム構造を変えられる選択肢があり、その組み合わせにより値段と乗り心地や性能がまた若干変わります。
値段設定の決定権を持つのは、マーケティング/セールスを担当するボスですが、そもそも本人は消費者の立場であった試しは過去になく、飛んだ事すらありません。技術的な知識もほぼ無く、どのオプションがどういう理由でどのような効果をもたらすか、細かい事は説明ができません。そもそもどういった組み合わせが可能なのかすらはっきり知りません。ですから詳細な仕様についてはマネージャーか私に主に尋ねなければならず、今回もそうした中の一件でした。
言うまでもなく、これだけでセールスとしては既に致命的な欠陥があるわけですが、それはまた別の話です。

さて、私が見せられた草稿は次の目的を持つページのためのものでした。
・複数あるオプションをセット化して整理し、適切な2~3パターンの中から選べるようにする
・それぞれのパターンの内容の差異と差額を明確化する

喩えていうと、ご飯とみそ汁ととんかつの「とんかつ定食」を提供する時に、
Aセットは基本のセットで1000円
Bセットは小鉢がついて1100円
Cセットはかつがロースかつで小鉢もついて1300円
といった具合です。そしてそれがマトリクス表のようになっている。
      A     B   C  
とんかつ  ×       ×  
ご飯    ×       ×  ×
みそ汁   ×       ×  ×
小鉢          ×      ×
ロース           ×
値段   1000  1100 1300

こんなイメージです。

ここまでは違和感が無いかも知れませんが、実際私が見たものは違和感だらけでした。何故か?
「基本セット」に含まれる項目が延々といくつも列挙されていて、「差異を明確化する」という目的から外れていたからです。

敢えてとんかつセットの喩えで続けると、以下のような項目がリストで延々列挙され、チェックがついていたと考えて下さい。
「○○県産の××をふっくら炊き上げたお米」
「○○のみそを使った××の具入りみそ汁」
「○○焼のお椀」
「○○で作られたお盆」
「○○製の割り箸」
……
……鬱陶しい。
どのように感じられるかは人それぞれだと思いますが、私が営業としてお客さんに値段の説明をする時に、このページは見せられないな、と思いました。
商品のどこにこだわりを持っているか、消費者にどこを見てどこを知って貰いたいか、ということを説明するのは私達にとっても重要な事です。
けれども一機100万円以上もする商品の性質上、何より商品の見かけ、機能、乗り味などが購買動機の大部分を占めることを鑑みて、お客さんがこのページにたどり着く頃にはそれなりの商品知識がある可能性が高いです。また技術的な細かい説明(こちらがアピールしたい商品の「ウリ」)は別のページに掲載することになっており、それ以前に私のような飛びの現場に居る人間が問われるままにすでに色々相談に乗っている場合が多いのです。
人気のとんかつ屋の行列に既に並んでいる人が、どの定食を食べようか決める時に器の良し悪しを気にするでしょうか??

話は逸れますが、関連して思い出された事例があります。
一揃いの皿Aセット、そしてAセットに多少不揃いのティーセットを付け加えたBセットがあるとします。Aセットそのものはそれなりに価値があるものですが、Bセットとして付属するティーセットは新品ではありません。
この内容を明示して各セットの値段を予想してもらう、という実験を行いました。
すると、AとBを両方提示された人達は、当然BをAより高く見積もるわけですが、その差は大きなものではありませんでした。
ところがAだけを提示された人達の結果と、Bだけを提示された人達の結果を比べると、Aセットの方がBセットよりも意外なほど高く値段を見積もられることが分かったそうです。
つまり、人の心理として「安物のおまけ」がついている方が「本体」単体の価値を安く見積もってしまう、ということらしいのです。
私が感じた違和感はもしかしたらこれに近いのかも知れません。
どのモデルにも標準でついているものを、技術的(そして値段的にも)価値の高いオプションと同列に列挙してしまうことで、消費者に本当に薦めたいロースかつ…もとい機体のフレーム構造の価値を棄損してしまったように思えたのです。

ではなぜボスはこうした愚挙に出たのでしょう?
単純に、知識的に売るものが無かったのだと思います。商品知識に乏しいために、何をどの場面でアピールすべきか、価値の優劣が定まっていないのでしょう、というのが私の推測です。
いや、そこへ行くと…
この勉強会でのブログを更新するために、日々の些細なネタから四苦八苦して考察を重ねてこんな駄文を書いている私も同じかも知れませんね。
いずれにしろ自分の手元にあるリソースしか見ていないと、目的を果たせないばかりか滑稽にすら見えてしまいかねないという話でした。
お粗末さまでした。

値段表” への1件のフィードバック

  1. いくら一流の良いものを売っていてもセットにしているものが三流であれば、全体として二流に捉えられてしまうという非常にわかりやすい考えでしたね。

    商品開発には3名のプロ「その分野に幅広い知識のある専門家」「実際、お客さまと対面する現場の人間」そして「冷静に判断できるまとめ役」が良い商品を開発し販売するのには必要だと考えています。

    今回はまとめ役が、専門家と現場の人の意見を聞かないままウェブサイトの内容を決めてしまったのでしょう。
    実はこれは海外によくあるパターンとも言えます。なぜなら、内容を決めただけでデザイナーや外注することが多いため、縦割りで考えずに外に出す場合があるからです。
    日本では、逆に現場の人間に文章を作らせたり、何度も校正をかけたりと逆に現場の方に負担が増えることが多くなります。

    どちらも良くはないですが、何を売るのか、これは非常に大事なポイントですね。

    フレームを売るのか
    抱き合わせで別のものを売りたいのか

    全てアピールしたくなるボスの気持ちもわかりますが、アピールポイントが多いと結局何が出来るのかわからなくなるという基本を忘れていたのでしょうね。

コメントを残す