こんな事で騒いでいるうちはまだ平和です

皆さんこんにちは。

いきなりですが、先日こんなことがありました。
普段、昼休みには会社のキッチンでみんなほぼ同じタイミングで昼食を取るのが習慣なんですが、その日に限って年配の二人が敢えてキッチンを利用しなかったのです。もちろんそれ自体は大した出来事では無いのですが、よくよく聞くと理由は流行りのウイルス騒ぎによるものでした。
その日の午前中、お客さんが会社を訪れてキッチンで談笑していたのを見て、「外部の奴が多すぎる、こんなとこでメシが食えるか!」という捨て台詞を残して出ていってしまったという…言ってしまえばダダをこねているようなものなのですが。
これだけだと理解に苦しむかも知れませんが、背景には社長がよくお客さんをキッチンに招き入れるのを従業員の皆が快く思っていないということがあります。我々にとって休憩をするための言わばバックヤードに当たる場所なのに、関係者以外の人にノコノコ入って来られるとオチオチ休憩も出来ないというわけです。
さて次の日、これを受けてマネージャーは各ドアに「従業員以外立ち入り禁止」の張り紙をし、会社の入り口にもウイルス対策の為暫くは訪問者を受け入れない旨を掲示しました。

私としてはやや過剰反応だと思える傍ら、ふと以前読んだ本の一部が思い出されました(出典は敢えて伏せます)。
その内容を要約すると次のようなものです。

これは一般的にリスクを見積もる時に、人が抱く先入観とその影響に関する話です。
心理学的な実験で証明されたことには先ず人が予想するリスクの高さと実際の統計とは乖離していて、その理由はメディアによる報道など目に触れる機会が多いほど危険な物事として認知され易いバイアスが働くこと。
またリスクに対する人の反応として、一度小さい危険度だと認識されると殆どリスク要素を無視してしまう一方、ハイリスクと認識されるとむやみに重大視してしまい、両極端になること。
そしてこうして固着した先入観は統計的な情報などを以て合理的な説明をしてもなかなか覆し難い性質があること。
こうした解説に加え企業による環境汚染の具体例を挙げ、メディアが住民の不安を煽り、最終的には環境に関する新たな法案の可決に至った過程を説明しています。但しこの事例に対する分析的な見解としては、実際の環境汚染の程度は未知数でさほど酷いリスクでは無かったとする向きもあり、公共政策のコストとしては高くついたものの、副次的には環境法規におけるめざましい成果がもたらされたとして締めくくっています。

…さて。
なぜこんなことを思い出したかと言えば、キッチン騒ぎにこれと色々な相似形を見たからです。
今流行りのウイルスが危険なものであるというのは間違いないですが、山奥に一人で籠ったりでもしない限りはリスクをゼロにすることは無理でしょう。
職場への訪問者を拒絶することが防疫的な効果としてどの程度有効なのかはまるっきり未知数ですが(そもそもそんなに頻繁に人が訪れることがない)、それでもそういう措置を取ったマネージャーは、この場合メディアに不安を煽られ環境汚染におののく人々に突き動かされて政策立案した政治家そのものです。
そして前述の通り、リスクに過剰反応する従業員を説得して認識を覆すのは至難の業なので、このちょっとした諍いを収めるにはパフォーマンスとして何がしかの対策を実行してしまった方が簡単だったわけです。
店舗運営というほど大袈裟な話ではありませんが、マネージメントをする立場の人が従業員を納得させる(もしくは言い訳を封じる)ためのちょっとしたトリックですね。

マネージメントされる立場の私としては、副次的な成果として今後永久にお客さんがバックヤードには入って来ないことを期待しています…。

こんな事で騒いでいるうちはまだ平和です” への1件のフィードバック

  1. これは非常に興味深い内容ですね。
    そして、店舗経営には意味が大アリの内容です。
    なぜなら「会社の内側にお得意さまを入れる問題」というのは少なからずどの業種業態にでもあると認識しています。お得意さまに対して内側に招くことでがっちり囲い込むという方法は私が20代のときに経営を学んだ師匠に習ったことがあります。「あなただけは特別」という見せ方です。
    このような例では、社長の意図がマネージャーに伝わっていない場合もあれば、わかっていてもそれ以外のスタッフを納得させるために社長を”悪”としているのか、色々な心理戦も垣間見えますね。
    竹山さんのブログでもありましたが、従業員満足度(ES)は非常に大事です。
    お客さまにバックヤードに入って来られたら休憩後に良いパフォーマンスが出来ないと考えるなら辞めるべきですね。

    ところで、お客さまがいると”おちおち休憩も出来ない”という意識は「お客さまの前ではしっかりと見せる」ということを考えている証拠です。こんな会社がオーストラリアにあるというのが嬉しいですね。

    ※私はオペラハウスの近くのレストランでコックさんたちがお客さまも通る通路でコック服のまま何人も地面にそのまま座り喫煙をしているところをたまたま通りました。

    ハングライダーを購入する機会があるならモナさんの会社で買いたいと思いました。笑

    普段の生活からアンテナを張っておられるのが良くわかる内容で良い刺激になります。
    次回も楽しみにしております!

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